「…どうしたって好きだなあ」
見えなくなってしまった先輩の残像を見つめながら、私はボソッと呟く。
「こんなに想ってくれる人がいて、純は幸せ者だね」
その声のするほうを見上げると、流川先輩が《必殺!イケメンスマーイル!》で優しく微笑んでいた。
…うん、わかった!
流川先輩は優しいお兄ちゃんって感じなんだ…!
「幸せ者だなんてそんな……黒崎先輩にとって、私がいないほうがうるさくなくて幸せなんだって、わかってはいるんです。
ただ…私が勝手に、たくさん幸せをもらってて…」
「そんなことない。 俺は花咲さんなら、純を変えてくれるんじゃないかと思ってる。
だから、すごい応援してるよ? 力になれることがあるなら協力するから、なんでも言ってね」
「先輩…良い人すぎます……」
こんな私の無様なところを何度も見て、それでも応援してくれて、協力までしてくれるなんて…
流川先輩がモテることは知ってるけど、私が思ってる以上にめちゃくちゃモテてそうだな……
2年生なのにサッカー部のエースで、学年一頭が良いと評判の先輩である。
「純はみんなに対してあんな感じだから、花咲さんを嫌ってるとかじゃなくて、人を嫌ってるんだ」
…人が、嫌い……?
黒崎先輩を追っかけるようになって2ヶ月ちょっと。
いろんなところから聞こえてくる黒崎先輩の噂話を耳にした。