「譲るも何も…黒崎先輩は私のじゃないですし…」

先輩はモノでもない。

それに……

「黒崎先輩も莉乃さんのこと…まだ好きだと、思いますよ…？」

そんな辛いことがあったなんて知らなかった…
そんなことも知らずに、よく黒崎先輩にあんな宣戦布告ができたなと、今になって思う。

「本当…？」

あぁ、なんだろう。

ズキズキ、やっぱり痛いな……

「はい…」

黒崎先輩がその親友のために莉乃さんと別れたというのなら、まだやっぱり黒崎先輩は莉乃さんが好きなんだと思うし、先輩が莉乃さんに対して怒ってる理由が誤解なら、それは解くべきだと思う。

「でも、小枝ちゃんは？ まだ好きなんじゃないの？」

「私は…いいんです。 黒崎先輩が幸せになってくれるなら、それで…」

「本気で、そう思ってるの…？」

莉乃さんは疑いの目で私に問いかけた。
私なんて気にせずとも2人は両想いだというのに……

「はい。 今まで…欲張ってしまってたんです。
どんどん欲張りになって、先輩にも好きになってほしいって、そう思うようになってて…全部私のワガママで、先輩を困らせてしまいました」

一番大事なことは、先輩が幸せになること。
そのために、私ができることは何か……