「ちょ、美羽!?」
「だから、小枝の気持ちをなかったことにしないでください。
最初から嘘だって決めつけないで、小枝のこともっとちゃんと見てくれませんか?……お願いします」
そう言って町野は俺に頭を下げる。
「美羽……」
「…町野さん、大丈夫だよ。 純、これでも心開いてるほうだから」
…っ…!
「「えっ?」」
正人の言葉が余程信じられなかったのか、声が揃った後輩2人は目を見開いていた。
「純って触られるのも嫌がるし、人が作ったものなんてとんでもない!
なのにさっき花咲さんに腕掴まれたのに振り払わなかったでしょ?」
正人の言う通り、確かに俺は触られるのが嫌いで、手作りの食べ物なんて気持ち悪くて拒否ってしまう。
こんな俺みたいに冷たい人間に触ろうとしてくるやつなんて、このチビくらいだけど…こいつに触られても何ともなかった。
自分でも手を振り払わなかったことに驚いている。
どうしてこいつに触られても平気なんだ……?
こんなに嫌いなのに、俺の体は嫌がってないとでも…?
「それに、手作り弁当作らせるなんて」
「おいっ、作らせてねーよ! こいつが勝手に作ってくるって言ったんだ」
俺は少しムキになって正人に言い返すと、前にはニッコリと笑顔になっているチビな後輩が。
だからなんだってんだ……
「でも断らなかったじゃん。 いつもだったら『いらない』って拒否するくせに」
「…もう拒否すら面倒なんだよ」
面倒…全部面倒。
こいつまじでしつこいし、うるさいし、何回遠ざけようとしたって近づいてくるし……