「気づいたら手が…動いてたんだよ」

「ふーん…。 考え事でもしてたんだ?」

そう言って正人がニヤニヤして見てくるので腹が立ってきた。

「先輩…、考え事してて1位とれちゃうんですか!?」

目の前のちっこいこいつは、身を乗り出して聞いてくる。

「いや、違うから…ただぼーっとしてたんだよ」

「…! ぼーっとしてて1位とれるんですか!?」

さっきよりも更に大きくなる目がこぼれ落ちそう。

目、でか……

「そうじゃない。 俺は………」

本気でやることから逃げてるだけ。

そう言おうとして言葉につまる。

何でも全力でやるこいつの前で、正直こんなこと言いたくない。

「…ま、純は目閉じてても満点取れるもんな」

俺が口ごもると、正人が変なことを言い出した。

……いや、取れないし…

「す、すごい…先輩天才じゃないですかっ!」

…いやいや、何で信じるんだよ…アホか。

「今思えば、先輩が頭よかったから勉強教えてもらえたんですよね。
私と同じくらいの脳みそなら絶対無理ですもん!」

そう言ってこいつは、笑いながら「はい、先輩のお弁当です」と、俺用の弁当を渡してきた。

いつもの笑顔のようで、どこかやっぱり違う気がする。

「しかも先輩教え方上手だったし、ほんとわかりやすくて!
あっ、先輩! 私数学83点だったんですよ!? 先輩のおかげです!」

違うだろ……