その青に溺れる


それから日を跨ぎ、電源を入れた携帯の日付を見て慌てて支度をし、漫喫を出てバスに乗り込んだ。

工場の面接だったことを忘れる所だった、場所を確認しながら目的地までをバスに揺られて過ごす。
流れる景色、晴れた空、雲の切れ間から覗く太陽、穏やかな日常が流れ込んでくる。

幾つ目かの停留場で短いブザーが鳴ってドアが開く、金属のステップを上がる音がし、そこで一度止まり、人の気配が此方に向かってくる。
やがてそれは隣に腰を下ろし、鼻に付く煙草の匂いで正体が判る。

大きな駅の近く、彼は何本もバスを見送ったのか、それは聞けなかった。
聞いたとして答えが返ってこないのは判りきっている。

「次で降りる、少し話ししよう」

「新しい仕事の面接に行くので無理です」

「じゃぁそこまで行く」

『ストーカーみたい・・・・・・』と毒吐き、目的地へ着いて料金を払ってバスを降りた。
海が近くにあるせいか潮風が時折短い髪を掻きあげて通り過ぎていく。

小さな工場の目の前は海が広がり、背の低い堤防に腰を掛けて彼は言う。

「ここで待ってる」

「仕事はいいんですか」と皮肉を込めて返す自分に

彼は煙草を口にしながら答える。

「お互い様だろ」

まるで此方の日程を知ってるような口ぶりに携帯を確認すると5分前を指しており、慌てて工場に向かった。