初めてした小さな反抗が受け入れられ、その時もキスはなく、
ドアを閉める手も歩く足も、どれも重く感じる。
それは嘘を重ねたせいか、隠れて涼太に会いに行くからなのか、
走ってもいないのに、急いてるわけでもないのに息苦しくて、喉が詰まる。
それでも足は涼太の元へ運び、最寄の駅で姿を見て鼓動が高鳴る。
「ごめんなさい、待ちましたか?」
「大丈夫、行きたいところある?」
変わらない優しい声に心が落ち着いていく。
「特には……」
「じゃぁ、近くの海までドライブ行こ、余り遠くも行けないだろうし」
そう言って踵を返す涼太の広い背中を追って歩くと、此方が助手席に行く前にドアに手を掛けて開かれ、初めてされた行動にむず痒くなりながらも乗り込む。
そしてシートベルトをするタイミングが重なり、思わず身を引いてシートに頭がぶつかった。
それを涼太は笑いながらからかう。
「緊張してるでしょ、まだ何もしないよ」
苦笑いしか出来ない自分に涼太は言葉を続ける。
「そんな顔しない、可愛い顔が台無し」
更に苦笑いを作る自分の手を取り、涼太は器用に運転し始めた。
それから二人で他愛のない話をした。
綺麗な大女優が昔悪さをしてた話、自分の兄の話、有名なイケメン歌手が実は髪が無い話などをしながら、気づけば笑って、自然に会話が出来るようになり、車は海へと辿り着いていた。



