いよいよ翌日だと言うのに彼に投げた言葉を後悔している。
それは言葉の意味ではなく、言い方の問題で、もう少し上手く伝える方法があったのではないかと言う後悔だった。
その日の夜はキスは無くて、代わりに髪を撫でられた。
まるで子供を寝かしつけるみたいに、節くれだった手で優しく柔らかく撫でながら、何処か遠くに視線を投げている。
目の前にある顎髭に昔を思い出す。
彼を知らない時は色々と想像しては消して、また想像してを繰り返して、
あの時は髭など想像しなくて、髪の毛も雑誌にあるような滑らかな髪型で、手はもっと大きいかと思ってた。
服もアメカジやストリート系など思っても見なかったし、ましてや萌え袖など想像も付かなかった。
そこで改めて感じる[現実]と[理想]のギャップ。
多分、自分はそれに着いていけてないだけ。
不意に吐いた溜息が重なり、彼が声を落とす。
「寝るぞ、ちゃんと寝ろよ、最近携帯見すぎだぞ」
呆れた口調になるのは自分が深夜番組を観ているからで、布団の中で観ていたのが何時の間にか気付かれている。
世の作曲家は音に敏感な絶対音感の持ち主なのではないか、と下らないことを考え眠りに就く。
そしてまた深夜に携帯を手にしてジョニーとケニーに会いに行った。
今日の商品は何にでも効く万能薬、掠り傷や切り傷、痒みや湿疹、ありとあらゆる傷に対応した説明をイヤフォンで聞きながら眺める。
フライパンを持ったケニーが手を滑らせ、指先が熱を持った縁に触れた瞬間に手が上がり、それを耳元に持っていく。
態とらしい動作ではあるものの、自然な流れは[骨髄反射]を上手く表現していた。
さすがだなと思う反面、彼の事が思い浮かぶ。あれは、条件反射だろうか、と。



