それでも女性は食い下がらずに言葉にする。
「明日の金曜の夜なんていかがでしょうか、確か土日はお休みでしたよね、午後9時に此方のBarでお待ちしてます」
そう言って小さい箱をテーブルに置き、テープレコーダーと手帳をバッグに仕舞って颯爽と出て行った。
初めて知り得た[土日は休み]と言う情報と約束の金曜日が重なり合って混雑しだす。
何か言葉にするべきだろうか、でも何と言えばいいのか、
「迎えに来なくても、良くなりましたね……」
やっと口を吐いて出た言葉がそれだった。
それほど遅く帰ろうとは思ってないが、万が一鉢合わせた時を考えると、あの険悪な雰囲気が漂うのが耐えられなかった。
「なに言ってんだ、迎えに行くぞ」
『だから当たり前のように言わないで』と思い、それは言葉として滑っていく。
「いや、いいです、時間も決まってないし」
「それでも行く」
「ホントにいいです、久しぶりに家族と過ごすので遅くなります」
どうして今だけこんなに饒舌に言葉が出てくるのか、
自分が何に対して苛立ってるのか分からない
なのに彼は表情ひとつ変えずに言ってくる
「だから電話しろって言ってる」
「……もう……いいじゃないですか、さっきの女性と呑んで来てください、子供じゃないので一人で帰れます」



