その青に溺れる


いつもは額にキスをして終わりのはずが、唇に一度触れて額を触れ、そして彼が口を開く。

「どうしてって訊かれてもな……キスしたらしたくなる、それだけだ」

当たり前の事を今更聞くな、と言葉が告げていた。

「何言ってるか理解出来ません」

布団に潜り込んで顔を隠し、目を瞑って眠りを待った。
金曜日の返事など訊かなくても彼のように強引に行けばいい。

「帰るとき電話しろ、迎えに行く」

「いいです、そこまでしなくても、子供じゃないので……」

「駅まで迎えに行くだけだろ、何で怒ってんだ」

困ったような口調の彼に罪悪感が生まれてくる。
初めて親に嘘を吐いて外泊した学生の頃のような感覚。

「怒ってません、眠いだけです」

これではまるで嘘吐いて逆切れした子供だ。
謝らないといけないと思ってるのに、それが出来ずに歯痒くなる。
その一方で何故彼に逐一断りを入れなければならないのか、と言う板ばさみで息苦しくなった。

布団を捲る手と煙草の匂い、近づいてくる顔に再び自然に目を閉じる。
軽く触れた唇がゆっくり離れ、もう一度触れ、確かめるようなそれは唇だけを弄んで離れていく。

「寝るぞ」

彼は金曜日の事には触れず、会話を辿れば恐らくは行ってもいいと言うことが分かった。
けれど、なぜ楽しみに思えないのかが分からなかった。