「悪い、嬢が客とトラブってさ・・・・・・」
そう言いながら溜息を吐き、煙草を吸う姿が想像付く。
少し高めの声で嘆く主は幼馴染で名前は佐々木稔、年齢は24歳で女好きの死んだ魚のような目した背の高い男。
特徴は揉み上げから乱雑に繋がる口髭と顎髭に右耳のダイヤのピアスくらい。
顔は自分の好みではないけれど、モテるらしいことは良く聞いている。
それは仕事にも影響していて、稔がクラブで黒服をしているらしいことは耳にしていた。
「いきなりで悪いんだけど、何か仕事ないかな・・・・・・」
「仕事?なんで急に」
「会社が倒産したの、で、今ニート」
「マジかよ・・・・・・」と含み笑いしながら言う稔に怒る気力さえ無く。
「お願い、ホステスとは言わないから、お皿洗いとか店の掃除とか・・・・・・ダメかな?」と言う自分に
稔は「うーん・・・・・・」と言ったまま黙る。
電話の向こう側で煙草を吸って吐き出す音と数人の女性の声が聞こえていた。
食い下がろうかと思ったけれど、その気力も無く、ただ次の言葉を待った。
そして不意に「あ、そうだ・・・・・・」と閃いたと言わんばかりに声を出し、続けて稔は言う。
「知り合いにさ、作曲家の奴が居てさ、そいつが付き人募集してんだけど、どう?」
「付き人?」と自分でも分かるくらい怪訝な声が出る。
「詳しくは聞いてないんだけど、取りあえず面接は随時やってるみたいだし、行って来いよ」



