やがて車は女性専門のアパレルショップの駐車場に滑り込み、彼は何事も無かったように車を降り、外から顎で出るように促されるまま車を降り、彼の後ろに続くように店へと足を進める。

彼は店内を歩きながら堂々と下着コーナーを眺め、時に肌触りを確かめて進み歩き、洋服コーナーで足を止めて一枚一枚丁寧に眺めては取り出すのを繰り返していた。
その様子を見ながら『さては彼女の贈り物だね』などと探偵を気取ってみても、頭の中では誰一人として答えてはくれない。

『どんな女性か教えてくれたら一緒に選ぶことが出来るのに』

そう考えているうちに彼から一枚服を渡され、次第にそれは数を増し、最後に黒色したコーデュロイのワイドパンツが置かれた。

「それ、着て見せて」と言う彼に素直に従い、試着室で着替えながら鏡を見ると上から下まで黒一色で、先程のワイドパンツに少し丈の長いセーター、他にも何枚かあったがどれも代わり映えしない暗めの色ばかり。

『まさかこれを贈るの?』と思い、試着室のカーテンを開け、待ってるであろう彼に言葉を投げた。

「いくらなんでも地味過ぎませんか、これ」

「……次、他の着て見せて」

自分の言葉など聞いてないかのように洋服を眺めて頷き、次の指示を出してくる。
何度か着替えて見せ、納得した彼は試着室に散らかされた服を何点か持ち、会計へと向かって店員に鋏を借り、それを手に此方へ来て自分が着ている服の値札を外して持っていく、それを見てから自分は店を出た。


彼が出てくるのを車の助手席側で立ち、此方へ向かってくる姿を確認し、ドアのロックが解除されるのを待つ。

運転席の鍵が開き、彼が乗り込んだのを確認してから乗り込んだ。