覆われた気配に閉じた目に少し力を入れたが、彼は軽く触れるだけのキスをして

「行くぞ」と言って腕を掴み、いつものように進んで歩き、車に乗り込む。

煙草に火を点け、銜えたまま片手をハンドルに掛けて車を走らせて行く。

そして3つ目の信号で不意に口が開いた。

「なぁ、服のサイズ幾つ」

どう言う意図の質問かも分からず素直に答える。

「Mサイズで収まります……」

「意外と普通だな」

『聞いといてそれはないだろう』と苛立って言葉が滑る

「そうですね、貴方の周りに居る女性と違って"一般人"なので」

その言葉に彼は鼻で笑い、車線変更をし、いつもとは違う道を走り出す。

「なぁ」

「なんですか」

「アイツの事好きだろ」

彼の問いに鼓動が跳ねて胸が一瞬掴まれる。

「何言ってるか分かりません」

そう言う自分に彼は苦笑いを浮かべ

「アホだな」と呆れるように吐き捨てた。