岸さんとの食事は、初めてにしては悪くなかった。
ファミレスにでも連れて行かれるのかと思ったら、小上がりのある小料理屋だった。
お酒を出す店だけれど、時間が早いから酔っぱらいの声もない。
私がお酒を断ると、岸さんも飲もうとはしなかった。
私に遠慮しなくていいですよと言ったら、バイクで来ているからとのこと。
そういえば岸さん、会社で数人しかいないバイク乗りだった。
後ろに人を乗せられるような大型の。
私は撮影のお願いをされているんだ、接待されているんだ、と思って、無理に話題を探そうともしなかった。
適当に話しすぎて、なにを話したか覚えていない。
あ、でも、言われたことの一部は、
「名取さんとしゃべってみたらどんな感じかな、と思っていた」
というフレーズは、耳に残っている。
なんでもないことのように、涼しい顔で岸さんはいたのに、私に届くと甘くてくすぐったいものに変わる。
気持ちよくなる。
まるで新しい音楽に触れたときみたいだ。
店を出て夜風に当たる。
もうすぐ十一月。
空気がさすがに冷たかった。
私は念入りにストールを巻きつける。
それを岸さんが見ている。
ファミレスにでも連れて行かれるのかと思ったら、小上がりのある小料理屋だった。
お酒を出す店だけれど、時間が早いから酔っぱらいの声もない。
私がお酒を断ると、岸さんも飲もうとはしなかった。
私に遠慮しなくていいですよと言ったら、バイクで来ているからとのこと。
そういえば岸さん、会社で数人しかいないバイク乗りだった。
後ろに人を乗せられるような大型の。
私は撮影のお願いをされているんだ、接待されているんだ、と思って、無理に話題を探そうともしなかった。
適当に話しすぎて、なにを話したか覚えていない。
あ、でも、言われたことの一部は、
「名取さんとしゃべってみたらどんな感じかな、と思っていた」
というフレーズは、耳に残っている。
なんでもないことのように、涼しい顔で岸さんはいたのに、私に届くと甘くてくすぐったいものに変わる。
気持ちよくなる。
まるで新しい音楽に触れたときみたいだ。
店を出て夜風に当たる。
もうすぐ十一月。
空気がさすがに冷たかった。
私は念入りにストールを巻きつける。
それを岸さんが見ている。