「それで偵察にいこうって気になったんだ?」

 岸さんの言っていた金曜の夜、穂佳ちゃんとビアガーデンに足を運んだ。
 街にビアガーデンホールはふたつある。会える確率は二分の一。
 案内された白い丸テーブル席で揚げ物やアルコールを注文した。雰囲気で頼んだ生ビールがおいしい。時折、風が吹き抜ける。

 開放感が心地よかった。こうしていると、目的を忘れそうになる。


「気のせいかもしれないけど、なんだか避けられている気がして。本当に忙しいだけならいいんだ。いや、よくはないか」

「私は生ビールがおいしいならそれでいいや。……あ、岸さん発見」

 探す気のない穂佳ちゃんのほうが先に岸さんを見つけてしまう。

「会社の飲み会かな」

「らしいよ」

「ふーん。……えっ?」


 私は黙って中ジョッキを傾ける。
 穂佳ちゃんの視線が肌に刺さる。そちらを見られない。反応がちょっと怖い。