帰りの車のなかで、例によって少し古い音楽を掛けた。興味のなかった曲も、知っている誰かが好きなのだと思うと耳に新しく響いた。


「今まで何人くらいとつきあったの?」

 懐かしさの効果でそんな疑問が浮かんだ。

「ちなみに私は0人!」

「知ってる」

「岸さんが答えにくいかと思って優しさで言ってあげたのに」

「……」

「さあ! 私の過去を知ってしまった以上、だんまりはなしよ!」

「そっちが勝手に言ったんじゃないか」

「何人? まさか私が初めてじゃないでしょうに、まさかねー」

「……」

「え?」

「九人。高速の運転中に話しかけない」

 自分で聞いておきながら、次の言葉が出てこなかった。
 初めての彼女が高校のときだったとして、そこから年にひとりとつきあえば大体そのくらいの数になる。数ヶ月で別れた子もいたかもしれないし、年単位で続いたこともあったかもしれない。
 私の扱いも慣れてるし、年下が多かったのだろうか。
 楽しくない想像だった。