闇に堕ちた英雄の捕獲作戦の流れを確認していると、突如バババババ!!という発砲音が聞こえた。

「なっ…、まだ来ないはずじゃないの!?」

楓は「この(自主規制)野郎が。シバくぞ」と悪態をついている。目がガチだ。私が好みのショタを見つけた時みたいになってる。

「とりあえずもう行動に移しましょう。お二人方は運営へ。ちーちゃんと私はエクスくんと接触及び戦闘を開始したいと思います」

誰が戦っているのかは分からないが、闇堕ちしたエクスは危険だ。力が以前よりもより強力になり、運営のスタッフでさえ抑えれるかどうか分からないのだ。

「分かった。詩子、ちひろ、怪我しないでね」

しずりん先輩は心配そうにそう言うと、いまだにエクスへ暴言を吐いている楓を連れて"第1世界線"へと移動した。

「ちーちゃん、行きましょう」

「うん、りょーかぃ!」

***

軽快に銃音を奏でていた僕のSCARがカチンッという音ともに弾切れを起こした。

「あはっ、もう終わりですね!さようならぁ!」

英雄は昏い笑顔を浮かべながらこちらに剣を振り下ろした。

あー、これ間に合わないなぁ…死ぬかも…

「バカ!お前は諦めんのが早いんだよ!」

ガキィン!という金属同士が擦れ合う音がした。目の前には本来の姿である長髪の葛葉がいる。

「葛葉…ありがと」

信じてたよ、と呟くと葛葉はハンっと鼻で笑った。

「うるせぇよ、当たり前だろ。ほら武器はこれで我慢しろ」

腕で英雄の剣を防いでいた葛葉は片手でパチンと指を鳴らす。すると僕の手の中に馴染むようにハンドガン2丁が現れた。
んー、ハンドガンか。まぁ2丁もあれば十分か。

「ありがと葛葉。ところでその腕どーなってんの?」

まだ防いでくれている葛葉の腕は英雄の剣と接触している部分だけ鉄のようなものに変化していた。

「吸血鬼って便利だろ?」

その言葉の次の瞬間には、葛葉は目の前にいなかった。

「ギャーーーーー!?」

遠くの方に吹っ飛ばされた葛葉は飛ばされた先にいたちーの姐御にストレートパンチを右頬に喰らい血反吐を吐いていた。

「なんだよもぅ!葛葉かよぉ!びっくりさせんなよぉ!」

「っるせーよ何してくれてんだバk…」

「あ"?」

「ッスーーーー……サッセェン…」

なんかあっち楽しそうだな。
愉快なふたりのやり取りを呑気にみているとヒュンッと真横に何かが通った音がし、頬がチリっと焼ける感触がした。

「なに楽しそうにしてるんです?あなたの相手は僕ですよ?」