周りは旅立って行ってしまった姉と幼馴染の無事を案じているのだろうと、私は何度も「偉いね」と褒められた。


私は屈託無く微笑んで、「当然のことです」と、答えた。


本当に、当然のことだった。


その二人が帰ってくることなど、考えても見なかった。


今思えばあの船に細工して、途中で壊れるようにどこかのネジを外して置けばよかったのに、それをしなかったのは、私の最後の優しさだったのかもしれない。


そこまでしきれるほど、私はまだ古屋千秋を憎みきれてはいなかったのだ。


その二人が一年後に帰って来たとき、私はもう誰一人として人間も神も信用しないことを心に誓った。


私は18歳。


古屋千秋は32歳。柳玲は25歳になった。


お節介な町の人が私が熱心に神に祈りを捧げていたことを話すと、姉は本当に嬉しそうに顔を綻ばせて私を抱きしめた。


古屋千秋も許されたと思ったのだろうか屈託無く微笑んでは礼を述べてお土産を両手一杯にくれた。



そして二人は言ったのだ。


結婚する事にしたと。