ウェディングベル



会話が途切れて、私はシーソーから離れると子どものようにジャングルジムへと向かうと、古屋千秋を手招きで呼んだ。



「ねね、登ろうよ!」



「お前スカートのくせに」



「じゃあ、ちー兄先登って!」



そして古屋千秋のその後を私は彼の腰を眺めながらその肉のない、筋肉質の細い、それでもまだ私にとっては大きい背中を眺めては昔を思い返していた。


この公園によく連れてきてもらっていた頃は、姉とは違い、教会で信用ならない神様に祈りを捧げたり、歌を歌ったりすることが嫌いでよく愚図っていた。


その愚図りを直すのは古屋千秋の仕事で、この背中に負ぶってもらっているときは、泣き止んで、その温かい背中に全てを任せることが出来た。


ジャングルジムのてっぺんは私の特等席。


一番夕日を長く見ていれる場所。


何度も夕日に向かって行かないでと泣いた記憶がある。


今は昼間だから夕日なんて物は姿形さえない。…太陽はあるけれど。



「ジャングルジムって、大きくなってから登るとホント小さいよなぁ」



「どうしよう、小さい時登れてたのに今登るとちょっと怖い」



数センチの幅の鉄パイプの足場しかないこの遊具は子どもの時は器用に登ったり降りたりしていたのに、今では手を離すことさえ怖い。


確か私はここで、ボールを使って遊んだ記憶がある。


ジャングルジムのてっぺんに私が立って、下で古屋千秋がボールを投げて、それに当たったら、交代。


そんなゲームをしていたこともあった。今では絶対に出来ないだろう。



「子どもの頃は怖い物知らずだからな」



てっぺんの鉄パイプに腰を下ろしながら、古屋千秋はいつもより少し高い位置から見る風景をなんと無しに眺めていた。



「昔の美里はホント、泣き虫のくせに強情っつーか、度胸があるっていうか、気が強かったよなぁ」



「よく泣いてたなぁ」



「教会行くの嫌いなくせに太陽が沈むのも厭だっつって……お前ほど手の掛かる子どもはそういねぇよ」



「飽きなかったでしょ」



古屋千秋は、私よりも私の事を覚えていた。