街を見下ろす、小さな丘。


そこから見下ろせば、家から自転車で30分は掛かる海や、2時間は掛かる山が一挙に見渡せる。


通っていた小学校も中学校も、通っている高校も、微か、住宅地の中に少し窮屈そうなしかめっ面で顔を覗かせている。


神社の鳥居は悪戯をして怒られたっけ。


あの公園のジャングルジムで、沈んでく夕日が少しでも長く在れるように、のぼっては追いかけてたな。



静かで、のんびりとした、この何の遊び場も無い田舎に歓声が沸きあがって、絶望の音が響いた。



私は着慣れない水色のパーティドレスを風に靡かせながら遠いようで近い距離にある教会を見下ろしていた。


声だけが聞こえて、姿は見えないけれど、きっと皆笑顔で幸せを純粋に喜んでいるんだろう。


教会の、普段は鳴らない鐘の音。


歓声を上げる、祝福者。


そして祝福されるべき、二人の男女。


幸せな顔など、見たくなかった私は早々に教会を出て一人、丘の上に来て、この広い田舎とちっぽけな自分を見比べては、溜息をついていた。