夜の十時を回り、電動のこぎりの音からのこぎりの音に変わり、その音が小さくなった時、私はコーヒーとおやつを持って小屋へと訪れた。


電灯の少ない田舎町の、道。


それをあの小屋の光が照らしてくれている。


静かに玄関の門を開けて、中へと入ると、私は微かに開いているその扉へと手を掛けようとした。



「そう…手伝えることがあれば、言ってね」



ビクッと、私は大げさに手が震えて、思わずお盆をその場に落としてしまいそうになった。


女の声が聞こえる。


聞きなれた、この澄んだ五月の風のような声は、アイツだ。


私は微かに開いた扉の間から中を伺い見た。オレンジの電球に照らされて、古屋千秋と柳玲が言葉を交わしている。


姉は設計図を書いていたときに古屋千秋が座っていた椅子に座って、古屋千秋は姉の足元の地べたに腰を下ろしておにぎりを口にしている。




ギリッ…




唇が悲鳴をあげた。


それでも許せなくて、その悲鳴を無視した。


鉄の味が、口の中に広がる。不味い。