「まだ寒いか?」



「ん、ちー兄手貸して」



徐に差し出された手に、私は自分の手を合わせてギュッと握り締めた。



「うわ!冷た!お前なぁ…」



言いながら、古屋千秋は自分の体温を私に分け与えてくれた。


その大きな両手に握り締められた私の手は、その体温と自らが上げていく体温のお陰で少しずつ暖かさを取り戻していく。


勿論、顔も熱い。



「ちー兄、明日初詣行こ?」



「…人多いのにお前物好きだな」



「都会に比べたら少ないよ。小さい神社でもいいからさ」



古屋千秋は暫く渋っていたけれど、直ぐに私が頑固なのを思い出したのか、「仕方ないなぁ」とため息をついて、了承してくれた。


この街の人は殆どがクリスチャンなので神社には行かないのが決め手となったのだろう。


毎朝の日曜日のミサにつき合わされていた私はこの時漸く、この町の人間がクリスチャンでよかったと思うようになった。


因みに私の家もクリスチャンだけど、私は無神教徒で、古屋千秋は数少ない仏教徒の人間だ。


姉には絶対に誘えないことをいい事に、私は約束をこじつけた。