目が覚めた時、私は見慣れぬ天井を眺める事になった。


此処がどこかを考える前に、酷い頭痛が思考を遮る。


額に手の甲を当てながら、私は微かに目を開いて部屋の中を見回した。


仏壇には先ほど見たご馳走の盛られた皿が置かれて、線香はまだ長いその姿を残している。


あぁ、此処は古屋千秋の家だと気付くのが早いか、本人が来るのが早いか、ほぼ同時に近い形で、私は毛布を取って来てくれたのだろう古屋千秋と目が合った。



「あ、起きた?」



「ちー兄…」



「あんな所で寝てたら風邪引くぞ、酔っ払い」



「だって眠たくなったんだもん」



「未成年が無理に飲むからだ、玲が止めるのも聞かないで」



私の上に毛布が掛けられる。


上の布団一枚だけだった私は、身体全体に微かな重みを感じた。


この重みが暖かくなるまで少し時間が掛かりそうだ。なぜなら私の身体はかなり冷えていたのだから。



「ちー兄、寒い」



「当たり前だバカ。ストーブ持ってくるから待ってろ」



貴方が隣にいてくれたらいいよ。


呼び止める間もなく、古屋千秋はふすまの奥に消えた。


遠くからガコガコと騒音が響いて、私の頭蓋は殴りつけられるように痛んだ。


石油ストーブを持ってきてくれた古屋千秋は手際よく火をつけて、魔法に掛けられたかのようにストーブは段々と赤く熱を発し始める。