『今日はハルカくんにプレゼントがあるの』
部屋中を確認したけど、“ここ”には盗聴器も小型カメラも置いてなかった。
だから名前を呼べるし、ハルカくんも狐のお面はつけてない。
ピンと張り詰めた緊張の糸が緩む時間。
唯一の、憩いの場所。
ハルカくんなんて、優雅に紅茶を飲みながら真剣な顔して本を読んでる。
「・・・プレゼント? 僕を部屋に呼んだのはそのためか」
あれ? 青い栞・・・。
まだ読みかけなのに目印つけないのかな。
『うん。 ハルカくん日頃から私のギターに付き合ってくれてるでしょ』
本題を切り出すと、睨めっこする本から下げていた視線を上げてくれた。
ハルカくんがじっと私を見てくる。
私もじっと狐さんを見る。
女の私より肌が綺麗・・・。一体どんな手入れをしたらその美貌が保つのか。
『だからそのお礼に、パンプキンキッシュを買ってきたの』
「パンプキン・・・キッシュ」
『ハロウィンは1日仕事で潰れたし、雰囲気だけでもリベンジしようと思って』
「パンプキンキッシュなんて、食べたことない」
いや、それは私もだけど・・・。
「うまい話には裏があるものだし、警戒しないのは危険すぎるよね」
急にハルカくんは少し怖い顔になる。
「裏・・・あるの?」
『ない』
「そんなの信じられないね。 何か企んでんだろ」
辛辣な言葉とは裏腹に目元は緩んでる。
素直じゃないね?