「それって、SPバッジですよね? ドラマで見た事があったのでそうなのかなって」


話題探しの意味もあったけど、キョウさんのことも知りたくて、俺は思わず尋ねていた。

深入り禁止とはいえ・・・気になる。

年上のキョウさんが年下のユリさんに先輩呼びを使っていることへの違和感。


「はい、もちろんッス。 正真正銘のSPバッジです。 こう見えても警視庁警備部警護課に所属してるんですよ」


俺を全く警戒してないのか、キョウさんはあっさりと頷いた。


「今もある任務があって、西郷家周辺を張ってるんです」


ある任務・・・。

“先輩の家は複雑で、昔はそれが原因でよく厄介事に巻き込まれてて・・・とにかく俺、先輩が心配なんです”

再び、キョウさんが言っていた言葉を思い出す。


「だから西郷のことはよく知ってますよ。 知っておかないといけませんからね」


やっぱり変、だよね・・・。

なぜ、キョウさんはどこにでもいる一般市民のユリさんを守る任務に就いているのか。

それとも守るというのは建前で、なにか他に目的があるのか。

踏み込みすぎるのは危険だと思ったけど知りたい気持ちの方が強かった。

あの西郷家を張ってるなら、また会うことになるかもしれない。

今は少しでもユリさんの人間関係や状況を把握できる情報がほしい。


「君の目的はなに?」


SPとは本来、特定の人物を守るもの。

京さんはユリさんを警護してるらしいけどその理由は不明だ。

もしそれが表向きの任務だったとして、キョウさんの目的はなんだろう。

そう思って、ついそんな言葉を口にしていた。


「・・・・・・・」


って、さすがに直球すぎた・・・?

でも、もう遅い。

キョウさんは俺の言葉に、笑みを消した。

そして、耐えるように強く拳を握り締める。