『・・・・・・』


自分でも、不思議に思う。

出会いがあれば別れもある、今までにもたくさんの別れを経験してきたのだ。

尊敬していた先輩の卒業式、可愛がっていた後輩が族を抜けたとき、愛する人が逝ったあの日に思いを馳せたのはつい最近のこと。

それでも、誰かひとりに執着したり、いつも即断即決の私がそんな風に考え込むなんて、絶対にありえないと思っていた。

なのに・・・。

たしかに私は、自分の決断で賽を振った賭けの結末を迷っている。

いや、正しくは違う。

この“予感”が間違っていないかどうかを、まだ計りかねている。

もしかしたら、みんなが私の・・・。

私の探し求めた、理想の人間かもしれない。

ずっと、ずっと探し続けていた。

私の願いを叶える、理想のひと。

ふと手を伸ばして、ルナさんの頬にかかる髪に触れると、その身体が小さく身じろぎした。

起こすのは可哀想だけど、早く起きて、その瞳で見つめてほしい。

そんな相反する気持ちを持て余していると、ちいさくルナさんの唇が動いた。


「んー・・・・ユリ、お姉様・・・」


『・・・っ!』


起こしてしまったかと思ったけど、寝言だったらしい。

まさか自分の名を紡がれるとは思わず、柄にもなく鼓動が逸った。

私の夢・・・見てくれてるのかな・・・。


『今日の0時まで時間をやる』


それから、何度電話をかけても無機質な音が流れるだけだった。