「ユリお姉様は僕が殺します」
そうして、私の心を見透かしたようにどこまでも優しい微笑でルナさんが言う。
『ありがと』
その圧迫感に、思わず声が掠れた。
「僕を死なせたくなかったら、絶対に・・・僕から逃げないでください」
それは、まるで呪いのように。
愛しそうに私の耳に囁かれる。
なんて理不尽・・・。
そんな悪態とは裏腹に、私の心は言い知れない愛しさで満ちていた。
狂愛に身を焦がすルナさんの笑みから目が離せない。
本当なら抵抗すべきなのかもしれない。
だけど。
結局のところ彼が言う通り、どんなに酷いことをされたところでルナさんを手にかけるなんて無理な話だ。
「こういうことされて、嫌じゃないですか?」
『うん。 嫌じゃないよ』
どうにか頷くと、ルナさんはふっと笑った。
『恋とか愛とか、細かいことはもういいや。僕は今、ただ・・・ユリお姉様が欲しい』
動悸が逸る。
こんなのは、ずるい。
今の素直な気持ちは・・・悔しさだった。
「これでも殺し屋の端くれですから、お酒やタバコ、あと賭け事も経験があるんです」
うわあぁぁー・・・。
悪いことばかり教わってるんだね。
「ね、ユリお姉様。 僕にイイこと教えて」
『学校に行ってくれるならね』
ただ、“一人じゃない”と否定したい。
今だけは、この手を離したくない。
その気持ちだけは確かだったから・・・。
私は諦めと期待を抱きながら、ルナさんの手を強く握り返した。
