「ユリ! 朝帰りしたら犯すよ」


「そういうときは、今度から電話しろ。 何があっても夜に一人で出歩くな」


それから私は夜の外出禁止令が出され、お風呂場に放り出され朝食を死ぬほど食べさせられ・・・サンザンだった。


「俺達までドーナツもらっていいの?」


「今日くらい家事は休め」とか「クマが消えるまで寝てろ」とか、色々なお節介を焼かれた。

そうして布団に入って30分もたたない頃、ルナさんが様子を見に来た。


「ユリさん、大丈夫ですかぁ?」


ドーナツを突き出してきたルナさん。

どうして?

私は一瞬呆気にとられ、だがすぐにその意図に気づいた。


『もしかして、口止め料ってことかな』


「褒美ですよ、褒美」


ほら、と促されて、私は結局ドーナツを受け取った。

甘い・・・。

ドーナツを一口かじると、舌に絡む甘さに頬が緩むのが分かる。

褒美でも、口止め料のつもりでも、もうなんだっていいような気がした。

今は騙されてあげる。

でもね、美しく咲き誇るバラがそうであるように人間にも綺麗なものには棘があるのよ。


『お腹の調子いいみたいだね』


ビクッ!!


『ルナさん。 学校に行ってください。 ヒロトさんみたいに留年しちゃうよ』


「うるせえな、黙って寝ろ」


堕天使ウサギ? 小悪魔降臨?


『ねえ、ルナさん。 学生の本分は勉強ですよ。 支度してくれません?』


私は部屋の扉をシャキーンッと指差して言った。


「僕に構うなって言ってんだろ。 家政婦面で干渉してくんな」


もちろんルナさんは拒否。


『さっ、服着替えて。 ルナさん』


「・・・もういい。 お前なんか大っ嫌いだ」


ルナさんは足音荒く、私の部屋を出ていってしまって。


『ほんと・・・お子ちゃまって感じ』


あとには私だけが取り残された。