蒸し暑い、熱帯夜だった・・・。

殴られた頬が、じくじくと痛む。

また・・・昔みたいに戻れると思っていた。

だけど、抵抗するたびに、あの人は煙草の火を押しつけ、私は何度も苦痛に苛まれた。

何度も何度も、その繰り返し。

死にかけても、知人のツテを頼りに堅気ではない裏社会の医者のおかげで息を吹き返してしまう。

いっそ死ねたら、どんなによかったか。

そんなことを思ってしまう時点で、私はもう壊れていたのかもしれない・・・。

あの人は私があの人なしでは生きられない身体になったのを見届けると、“自由”を私にくれた。

四角い箱の中から抜け出してからは、ただフラフラとさまよって、気づくとあの場所にいた。

あの人と遊んだ思い出の公園。

そこでただしゃがみ込んでた。

私に近づいてくる人も、奇怪な目で見てくる人もたくさんいた。

苦しみから解放されたいがために、私は引き金を引いた。

数えきれないほどの命を奪い、あんなに長かった髪もバッサリ切って、血にまみれた道に、足を踏み入れてしまった。

その日も“夜の散歩”と称し、外の世界に出た。

目についた人と片っぱしからケンカして、加減なんかなしで容姿なく殴った。

心は麻痺して、痛みを感じなくなった。

幸せだったあの日は、記憶の彼方に消えた。

兄さん・・・私は・・・君を・・・君の心を守れなかった・・・。

私は血の匂いに身を委ねた。