耳を塞ぎたくなる音に、私も少し前までこの世界にいた実感が湧いた。

待ってたよ?

誰にも邪魔されない戦場へようこそ・・・。

ねえ・・・兄さん?


『兄さん? 永遠に眠ろうか?』


「ああ・・・ユリ、地獄で会おうな?」


懐から銃を取り出すと、兄さんは幸せそうに微笑みながら私に差し出した。

閑散とした工事現場を一望できるビルの屋上に涙の滴る音だけが響く。


『兄さん、どこか痛いの?』


「・・・・・・・」


問いに答えることなく、兄さんは無理やり私に銃を持たせた。


『死ぬのは誰だって怖いよ』


初めてだよ。

死に恐怖を抱いたのは・・・。

怪物である前に、私も1人の人間だったみたい。

ガタガタと震える手を強く握る。

最後くらいは・・・ブレない自分でいたい。


『苦しむのは一瞬。 楽にしてあげる』


私の言葉を聞くと、


「助けてくれ・・・」


手首を掴まれて銃口を自らの額に当てる。


「このまま引き金を引いて」


『あ、そ・・・』


「それが俺の望みだ」


『兄さん。 君はもう悪魔じゃないよ』


「俺は残虐非道な悪魔だよ。 俺と妹以外の奴なんて、どうでもいいからな」