『兄さんを殺しても君がいない街なら、本末転倒じゃんか』
隣に座ったヒロトさんの胸に抱かれたまま、壊れた人形のように涙を零す。
「・・・それくらい必死なの、わかれよ・・・」
私を抱く腕に少し力が入って・・・ヒロトさんはギターを見てる。
『なんで、泣いてるの?』
ヒロトさんの胸にくっついてた顔を上げて聞いた。
「それは・・・感染したから?」
ギターから私に視線を向けたヒロトさんは宝石のような輝く涙を零してる。
『泣き虫が?』
答えてくれない・・・。
『なんで?』
「だからッ、失うのが怖いだけッ」
突然顔を赤くするヒロトさん。
へ? 照れてるの・・・可愛い・・・。
作り笑みはもうなかった。
ガチャリと音がしてみんなが気まずそうに入ってくる。
「ユリさん・・・その辺で許してやって?」
『ユウタママ・・・?』
私を抱きしめてるヒロトさんを見て、みんな・・・お兄ちゃんを取られて悔しいのか・・・頬を膨らませてる。
「兄貴はね? ユリさんロスなんだ」
チュッーーー。
髪にキスを落とした後、ヒロトさんは腕を離してくれた。
「ヒロトに触れられた場所は消毒します」
ルナさんが私に突進してニヤリーーーと笑う。
いやいやいやッ、消毒って意味わかんないし。
全てに無気力なヒロトさんが、私に執着するわけないでしょ?
ヒロトさんを見ると・・・。
めっちゃ不機嫌オーラ全開の毛を逆立てた白猫様がいらっしゃった。
おおおおおッ。
「ぶっ殺す」
「ああ、ルナのお仕置きは任せた」
「僕の染谷さんに触らないでくれる?」
お前だけは許さない・・・とみんなうなずいてる。
「眠い・・・」
白い猫は力なく・・・・・・床に寝転がった。
