「ひっ、やめろッ! やめてくれえ・・・!」


「頼むッ、助けてくれ」


男の人の悲鳴に紛れて、鈍い音が響く。

数では圧倒的に不利なはずなのに、6匹の怪物に無様にも痛めつけられている。

そんな時間が、しばらく続いた。

やめて・・・ ・もうやめて・・・ッ!

そう、叫びたかった。

・・・なのに、声が出ない。


「ぐぁッ! ゆ、許して」


「がはッ! もう・・・やめて、くれ・・・」


声・・・・止まった・・・?

視線だけ動かして頭上を見ると、世界を輝かせてる星が目に入る。

一陣の強い風が木々を揺らし黄金を降らす。

月光を受けてきらきら輝くイチョウは、少しだけ恐怖を和らげてくれた。

私は、この景色に見覚えがある。

美しく神秘的で・・・怖い景色。

最近、やけによく見る悪夢。


『アイジさん・・・』


目を引くのは、赤。

夜空に煌めくストロベリームーン。

そして、黒い霧のような怪物。

これは、あの日見た愛する人の死の間際。


「見た?」


微笑んで口パクで聞いてくる野獣。

そして私は青くした顔を、思いっきり横にブンブンと強く振った。

朝焼け色のグラデーションより、身に纏う空気から振り撒かれる色気より・・・。

私は、海色の瞳に心臓が射抜かれた。

西郷シュウ。

年齢は私の一つ上。

歌舞伎町NO.1ホストで、年収は一生遊んで暮らせるくらい稼いでるらしい。

天然お色気イケメン。

三つ子の1人で、五男。


「君、桜場の子?」


その男の人は、微笑んでいた。

そっと、手を差し伸べてくれた。

西郷ユウタ。

年齢は私の二つ上。

優れた表現力で世の中を席巻する人懐っこい人気俳優で、素なのか演技なのかは本人のみぞ知る。

太陽のように眩しい色素薄めな金髪、水色に近い碧眼の瞳が妖しく煌めく。

肌は白く、華やかな目鼻立ち。

6兄弟の次男。