「その右目はどうした?」


ふいにシンの低音が響いた。


『私たちには身寄りがなくてね? あれよこれよと孤児院に引き取られて、容姿の美しさがどうたらこうたらでクラブへの商品としてお偉いさんの接待をしてたの』


「まー、絶世の美形だわな」


『? 束縛に耐えらんなくなって、自分の片目を抉ったってわけ』


「それ逆効果なんじゃない? “片目を失った美男美女兄妹”としてますますクラブで酷い扱いを受けるんじゃないの。 人身売買とか・・・変態野郎ばっかだし・・・」


困った顔してユウタが言ってる・・・。

ユリを含め、俺達は裕福な人間に身体を提供するだけの存在。

ようするに餌だ。


「あんたのこと、ちゃんと可愛がってやるよ」


『えっ?』


ユウタの言葉を遮った。


「俺達の悪夢はこれで終わっていい。 だけど最後に、片付けないといけない奴らがいる」


『・・・私達を買っていた側のこと?』


「ああ。 そいつらはダメだ。 餌がある限り、昔のような事件が起こるかもしれない。 厄介なことにぬくぬく育った温室育ち、飼い主には国の要人クラスが数名いる。司法で守れてる権力者を、司法で裁くのは不可能だろ」


・・・きっと、殺すしかない。

そんな遠回しな進言に、ユリは俺を静かに涙を流して見つめ返す。