久しぶりに高級住宅地に足を踏み入れた。

ここセレブが集まる高級住宅地は西郷兄弟の島で支配下によって管理されてる。

いつからそうなったのかは知らないけど、みんなが幼少期の頃にはそうだったらしい。

85億円の豪邸、プライベートプール付き、屋上には家庭菜園の畑があり、庭には光溢れるオシャレかつ大胆な貝殻木造オフィスもあってとにかくスケールがデカい。

他にも完全防音の音楽スタジオを始め、ギャンブルを嗜む娯楽室、スポーツジムetc・・・。

西郷兄弟のために作られた施設。

《補足》西郷兄弟の経済効果は数億円。

THE、温室育ち。

何一つ不自由がなく快適な空間。

懐かしい・・・ぜんぜん変わってないな・・・。

ふぅーっと深呼吸・・・。

心の中で『ただいま』と言ってみた。


「ユリお姉様、こっちですよ?」


「物置部屋改めユリお姉様の部屋!! 掃除したから綺麗でしょ?」


マジで? ルナさん。

汗水流して掃除する姿は想像つかないよ・・・。

荷造りはユウタママが手伝ってくれたから忘れ物はないはず。

アジトからこの家まで、電車の乗り継ぎは面倒だし大変ってことで、夜行バスで引っ越した。

昨晩は運動のおかげで一睡もできず、移動中は睡眠不足を解消すべく惰眠を貪った。

服では隠せない首のキスマークを隠すためにマフラーをぐるぐる巻いて・・・確信犯のユウタさんは反省の色もない。

家の中は暖房がガンガンきいてる。

ありがたいんだけど、もう少し温度を低めに設定してほしい。

我慢大会のはじまりはじまり〜。

羊が一匹・・・。

羊が2匹・・・。

羊が3匹・・・・。

おぉう、MY、ガーщ(゚Д゚щ)

数えるのは羊じゃなくて時間だ。


「ユリ?」


ぼーっと屋根裏部屋を見つめる私を心配したのか・・・シュウさんが待っててくれてた。


『お邪魔しま〜す』


部屋の中に入る。

中も変わってないのかな?

本棚もジャンル別にきちんと整理されてる。


「おかえり」


「頑張って働けよ」


懐かしい雰囲気だな・・・。

Roseliaは仲良しサークルじゃないから、兄さんも含め下っぱも幹部も挨拶はしない。

世界の果てのように枯れた監獄は・・・陽の光を一切遮断し・・・暗い。