・・・最後まで、分からなかった。
今、こうして兄さんが満足そうに笑ってる理由すら、正確には理解できてない。
『でも、私は兄さんのことを・・・嫌いには、なれなかったよ』
馬鹿みたいだね。
あんなに酷いことされたくせに、兄さんのことが好きだなんて・・・。
【不思議な子だね】、いつだったかユウタママはそう言った。
自分でも分かってたよ、私は変わりモノだ。
だけど、今は素直によかったと思えた。
兄さんが人間らしさを取り戻せたなら・・・よかった、と。
「・・・ありがとな、ユリ」
『さよなら、兄さん。 地獄でね』
引き金に掛けてた指に、力を込める。
Good Bye, My Brother.
・・・指が震えることは、なかった。
バンッ!
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
邪魔、された・・・?
『はっ、「盛ってんじゃねぇよ!! このッ、シスコン野郎!!!」
・・・・・・!? まだ撃ってない。
今の、私じゃないよ。
硝煙の香りを纏った何かが、肩を撃たれて苦痛に顔を歪める兄さんを押し退けて私の前に来て、羽織ってた上着をバサッと肩にかけられた。
『・・・ハル、ジロー?』
よく見たら、ハルカくんが真剣な顔で必死こいて全開のボタンを閉めてた。
「・・・んだよ、下手くそ・・・」
ハルカくんの叫び声で生き返ったのか、不機嫌そうに兄さんがムクッと起き上がった。
『うぐっ・・・ごほごほ!』
「ちょっと・・・!!」
咳き込んだ私にハルカくんが水を渡し、それを一気に飲み干す。
『ごほっ、げほっ・・・な、何やってんの?』
「・・・何って、人助けだけど」
ハルカくんは気まずそうな顔して、小さな声で呟いた。
ねえ、バカなの?
アホなの?
ここの壁にはライフルが配備されてる。
兄さんがスイッチを押せば、部屋の周囲からいくつもの銃弾が放たれるんだ。
死ぬのは簡単だけど生きるのは難しい。
なんでわかんないの?
