「それではお食事券をお配りいたします。今日の夜の分と……」

「汚職事件?あっ、お食事券か!お食事券、汚職事件……」

「おい!ひとりで何ブツブツ言ってんだよ!」

わたしは友だちに言われ、ふと我に返った。何のことはなかった。それはまぎれもない、お食事券のことなのだから。しかし、仲居さんは怪訝な顔をして、わたしの方をじっとみている。わたしはどうも気まずくなったので、説明を続けるよう促した。

「よござんすか?それでは……」

この話は「お食事券≠汚職事件」というおやじギャグを言いたかったがためにでっち上げた虚構である。あえて言うなら、実話の部分は今年の夏に友だちと旅行に行ったことと、旅館で仲居さんからお食事券を配られたというだけのことである。しかし、詰まらないおやじギャグを思いついたものだ。もう、これくらいにしておこう。それは小さな小さなお食事券の話であった。