彼はまともな食事を取れず、元気がなかった。

「お袋に亜実と別れた報告しなくちゃな」

彼は会長の元へと急いだ。

「あら、柊、久しぶりね、亜実ちゃん一緒じゃないの?」

「あっああ、実は亜実と別れた」

「えっ?どうして?」

「亜実が昔付き合っていた男に言い寄られて、その現場を週刊誌に掲載された、不倫だと」

「それ、間違いじゃないの、違いますって言えないの、亜実ちゃんは不倫なんてしないわよ、柊の事大好きよ」

「俺だってわかってるよ、でも記事になったからスキャンダルは痛手なんだ」

「そう、亜実ちゃん大丈夫?心配だわ」

「迷惑かけたと自分からスマホ置いてったから、もう連絡取れない」

「そう」

「俺、これから役員連中の薦めで見合いしなくちゃいけねえから、再婚決まったら報告するな」

「柊、本気で言ってるの?」

彼はため息をつき、声を荒げて会長に食ってかかった。

「しょうがねえだろ、会社のため、社員のため、社長としての自覚を持てと言われたんだ、俺にどうしろって言うんだよ」

「柊」

彼は深呼吸をした。

「ごめん、お袋」

「柊らしくないわね、それだけ亜実ちゃんに惚れてたってことね、亜実ちゃんと再婚の方向へ歩いて行きなさい、亜実ちゃん待ってるわよ、きっと」

「そうだといいんだけどな」

彼は病院を後にした。