滝沢さんは社に戻った。

「社長、戻りました、身分証明書とクレジットカードとマンションのカードキーです、それからスマホを預かってきました」

「スマホは持って帰ってくるなと言ったはずだ、亜実と連絡取れなくなる」

彼は私のアパートに向かおうとした。

「社長、お待ちください、会いに行ってはいけません」

「滝沢、なぜだ、なぜスマホを持って帰ってきた社長命令と言ったはずだ」

「社長、もうアパートには亜実さんはいません」

「どういうことだ、説明しろ」

「亜実さんは引っ越しされました、もう、諦めてください」

「諦める?話が違う、ほとぼりが覚めるまでと言ったよな、俺を騙したのか」

「社長、会社と社員のためです、辛抱してください」

「辛抱出来るか」

彼は社長室の机の上に置いてある物を、全て手で払い除けた。
彼の手は拳で怒りを現し、目を閉じて涙を堪えていた。
彼と私は別れた、連絡する手段を閉され、夢も希望も無くした。