社長の溺愛にとかされて

「行こう」

茫然としている私の手を引いて、慎也が祭壇に向かう。

あまりものサプライズに何の言葉も出ないでいると、
慎也と私は祭壇の前に行き、向かい合わせになる。

「玲緒奈これを」

そう言って渡されたのは、一枚の紙。

ロウソクの中の光でも分かる、これは婚姻届・・・

「っどうして」

婚姻届は、慎也の欄は埋まり、保証人まで書かれ、
後は私が記入するだけになっている。

「玲緒奈が俺を振ったのは、俺が嫌いな訳じゃない、
 思い込みかもしれないけど、むしろ俺の事好きじゃないかと思っている、
 ただ、過去の事があって、踏み出せないだけだって、

 過去の事で、本当に苦しんでいる事は知っている、
 恋に踏み出そうとしたら、手が震える程だって、
 
 だから、3か月だけ俺と付き合って欲しい、
 3か月たっても、まだ苦しければ、俺は玲緒奈の事は諦める、
 苦しいとは思う、でも俺の手を取ってくれないか」

その言葉に、視界が歪む。

ロウソクが妖しく揺らめき、私の心をかき乱す。