桜の花が咲いて、ゆっくりと散っていく、春。



真新しいブレザーにローファー、全てが綺麗で、似合っているか不安になる。

中学から変わらない自分の内面と今日から始まる高校生活。

ゆっくりと顔を上げて、校舎を見た。

私、登坂結衣は今日、高校に入学する。




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「結衣ー!」

教室を探して廊下を歩いていると後ろから声がした。

「卒業式ぶりだね」

「詩織!」

「同じクラスかなっ」


詩織は中学から同じで、3年間ずっとクラスが同じだった。

一緒にいる時間は長くて、親友だ。


「結衣何組?」

「Fだよ、詩織は?」

「私もF!」


詩織の短い髪が揺れた。

それにしても、と詩織は私の制服を眺めた。


「結衣は何着ても似合うね」

「……へ?」


間の抜けた声が出てしまった。

詩織はふふっ、と笑った。


「高校でもよろしくね」

「こちらこそ!」


1年F組の教室に2人で入った。





私立の西咲高校は県内でスポーツがいちばん盛んだと言われていて、クラスによっては文武両道。

制服も可愛らしくて、校舎も綺麗で、人気だ。

詩織は第1志望の公立のトップから惜しくも落ちて西咲に来ている。

私は単願でこの高校を選んだ。

理由はただ一つ、


思い切り部活をするため