誰かなんて見なくてもわかる……。

じわじわと滲み出る威圧感にゾクゾクと背筋が凍る。

そういえば私……さっき大和先輩の手を──────────

ーグイッ。

ひいっ……!

私の胸元のネクタイをクイッと自分の方へ引き寄せた大和先輩。

「いい度胸だな」

地を這うような低い声に、ビクッと肩を揺らした私は、ネクタイに引っ張られて大和先輩を見上げる体勢に。

吐息がかかりそうなほどの距離……。

大和先輩の甘い匂いが鼻をかすめ、鋭い眼光が逃がさないと言っているように私の瞳を貫く。

だけどいま……私の心の中にあるのは、怖いとかそんな感情じゃなくて──────────