バーの立ち並ぶ場所に来ると、道端でバーから追い出されたのであろう人たちが眠りこけていた。私は踏んでしまわないように慎重に道を通る。

「……あ、そういえば今日って給料日だっけ……」

バーを見ていたら思い出した。その刹那、私の目の前にあるバーの扉が開き、中から男性が現れる。金色の長い髪を一つに結び、赤い目をした顔立ちの整った長身の男性。ほうきを手にこれから掃除をするようだ。私はこの人を知っている。

「ローデリヒさん、おはようございます」

「アナさん、おはようございます。これからお仕事ですか?」

「はい」

「酔っ払いがまだ寝てますから、気をつけてくださいね」

そう言い苦笑するのは、レトロな雰囲気のバー「passion」のバーテンダーであるローデリヒ・ルシフェニアさん。

「今日の夜、お邪魔してもいいですか?」

私が訊ねると、「もちろんです」とローデリヒさんは微笑む。

「passion」は、私がこの国で働き始めてから給料日に必ず行っているバーだ。バーで一杯のカクテルをゆっくり飲み、ローデリヒさんと楽しく話す。それが私の楽しみ。