いつも、ずっと。

自宅に帰った俺は、やっと携帯を充電することができた。

充電器に繋いだままで携帯の電源を入れると、"着信あり"の表示が。



「電源落ちてたら履歴残らないんじゃ」



おかしいな。

昨日は風呂に入ってる間に電源切れてたのに。

不思議に思いながら着信元を確認する。



「なっ、なんで…………!」



昨夜、九時四十五分に明日美からの着信。

俺が風呂に行ってすぐじゃないか。

神様がもしもいるとしたら、なんて意地悪なんだ。

多分呼び出している途中で電源が落ちたんじゃないか。

呼び出し音が途中で切れてしまったとしたら、俺がぶっちぎったと思われたかもしれない。



………………最悪だ。

それなら俺に不信感を募らせていた明日美のぎこちない態度も納得できる。

それにしてもどうしてなにも言ってくれなかったんだ、明日美。

言ってくれてたら弁解もできたのに。



明日美にしてみれば、呼び出し中に電源が落ちたなんて考えもしないだろうしな。

それに昨日母さんと電話してたことも言ったし。

瀬名と話したことは伏せたけど。

そうだ、瀬名からの電話が余計だったんだ。



「ちきしょう。瀬名の野郎……」



でも、明日美が福岡に行くことを教えてくれたのは瀬名だ。

なんだかんだ言って瀬名は明日美と俺のことを気にかけてくれている。

それは田代先輩との和解に力をかしてやったから、というのもあるけど、それだけではないはず。

瀬名は明日美の会社の同僚でもある。

もしかしたら、俺の知らない絆があるのかもしれない。



まだ福岡に向かっている途中だろうけど……。

ダメ元で明日美の携帯に電話をかけてみる。



『お掛けになった電話は、電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないためかかりません。お掛けになった──』



ダメだ、かからない。

乗車中だからあえて電源オフにしてるのか。

それとも、拒否られたのか。

電源が入っていない以上、俺が電話をかけたということすら伝わらない。

言い訳することも許されないのか。



明日美のことばかり考えていて、田代先輩との約束を忘れかけていた。

大事な会合だというのに。

出かける準備に取りかかろうとしたその時、携帯にメールが来た。



「明日美……な訳ないか。田代先輩?」



浜町で待ち合わせだったけど、場所を変更するという連絡だった。