いつも、ずっと。

長崎駅に直行するつもりが、駅向かいのコンビニに行きたいと言われて寄り道することになった。

しかしそれは明日美の作戦で、俺を置き去りにするためだったのだと気づいた俺は直ぐに駅の駐車場に車を走らせた。



幸い駐車場が空いていたお陰で車を停められてホッとした。

明日美はコンビニから歩道橋を渡って駅に向かってるはずだから、急がないと。

素早くかもめ広場に移動したけど間に合ったのだろうか。



歩道橋の階段を降りてくる人達の流れに乗って、明日美が姿を現した。

見失わないようにただじっと見つめていると、視線を感じたのか俺に気づき驚いて見返してきた。



『なんでここにいるの?』って思っているんだろう。

もう俺の顔なんて見たくなかったのかもな。



「明日美が考えそうなことなんて、俺が分からんとでも思っとる?良かった、間に合うて」



泣きたいのを堪えてるような表情が胸に突き刺さる。

ちょっとの沈黙のあとで、口を開いた明日美。



「あ、そうだ。瀬名くんから伝言頼まれとったとやった。瀬名くんが友也に『いろいろサンキュー』って言いよったよ。いつの間に瀬名くんと仲良うなっとったと?伝え忘れるところやった」



それ、今言わないといけないことか?

瀬名が伝言を頼んだ理由は大体察しがつく。

明日美の方から俺に接触する機会を与えようとしてくれたんだろう。

口実があれば話をするきっかけになると思って。

アイツも意外とお節介なやつなんだな。



「なぁ明日美。いつ帰ってくる?この前は二週間くらいやったっけ。今度も同じくらいかかると?」



福岡行きってことは"白いかもめ"に乗って行くんだろう。

発車時刻は知らないけど、もうあまり時間はないだろうから次に話すのは明日美が出張から帰った時。



「うーん、どうかな。一週間くらいじゃなかかな?課長の都合で延ばされるかもしれんけん、ハッキリとは分からんけど」



一週間か。

それじゃ次の土日くらいには……。



「明日美が帰ってくるとば待っとるけん。そん時は俺のために時間作ってくれるか?」



今日は間に合わなかったけど、次に会うときはもう青柳さんとの契約も解消されてるはず。

なんのしがらみもなく、明日美と会える。



「なんか分からんけど、OK」



怪訝な顔をされるんじゃないかと勘繰ったけど、意外と軽いノリで受け入れてくれた。

良かったけど、違和感が拭えない。