いつも、ずっと。

「出張のことは母ちゃんから聞いた。昨日、俺に会いに来てくれたとって?ごめんな明日美。もう聞いたやろうけど、宿泊学習の下見で泊まりやったっさ。昨日の夜母ちゃんから電話かかってきた。だけん今日は家には帰らず車で待っとった。すれ違いにならんごとと思うて……」



今の発言については嘘偽りないと宣言できるけど、まだ明日美を騙していることには変わりない。

いまいち信憑性が感じられないのは自業自得か。



明日美が青柳さんからから何も聞いていないとすると、俺から田代先輩が青柳さんにプロポーズしようとしていることを言えない。

俺と青柳さんの契約がまだ生きてるのが足枷となって邪魔してるのが歯痒い。



その件についてはいまこの場で踏み込むことができないが、どうしても聞かずにいられないことがある。



「なあ明日美。昨日は俺になんか用事のあったとやろ?」



タイミング悪く不在してたなんて。

せっかく明日美から行動を起こしてくれていたのに。

本当に俺ってやつは……。



「ああ、出張のことば知らせとこうと思って。一応お隣さんやし、親友ってことになっとるし。黙って行くとも不自然たい」



本当に?

本当はもっと別のことがあったんじゃないのか? 



明日美の硬い表情をチラリと盗み見る。

何かを諦めたような、失望の色が浮かんでいるような気がするのは気のせいなのか。



「佐世保、ね…………」



福岡、という単語が口をついて出そうになるのを必死でこらえる。

明日美が佐世保だと言い張っているのに、俺が福岡行きを知ってると知られたらどうなる?

明日美の不信感を煽ってしまいそうで怖い。



青柳さんと昨日電話で話して今日の会合のことを知っているというのに、その内容については何も聞いていないのか。

田代先輩は帰ってくることしか青柳さんに言ってないのかもな。

確かに電話で言うよりは会ってから言うべきだろうけど。

それにしても予告くらいしといてもいいんじゃないか?

融通がきかないのも度が過ぎると嫌われてしまわないかとこっちが心配になる。



明日美はもう俺になにも言いたくないのか、窓の外を眺めている。

雨は相変わらず降り続いているけど、いつかは止むときがくるのだろう。

今日は終日雨模様という天気予報だったし、空を見てもまだまだ止みそうにない。



この雨が止んだ時、俺と明日美は…………。