しばらく待っていると、階段口から出てきたのは待ちに待った愛しい人。

傘を開き歩き出そうとする姿を見て、無意識でクラクションを響かせていた。



パッとこちらを振り向いた明日美に開けた窓から声をかける。



「明日美!」



その驚いた様子から『なんでここにいるの』とでも思っているんだろうと推測できる。

こんなに早く帰ってくると思ってなかったのか。

でもすれ違いにならずに済んで良かった。



「駅まで送るけん、乗れよ」



もしかして、拒否られたりして。

でも昨日俺に会いにきてくれたんだろ?

今の表情からはとても俺に会いたかったようには見えないけど。



「……うん」



その表情とは裏腹に意外と素直に車に乗り込んできた明日美。

とりあえず長崎駅を目指すべく車を発車させた。



「私なんかに構っとる暇あると?今日は未来と……未来や、他にも何人かと……大事な話し合いのあるとじゃなかと?」



俺からどう話しかけたらいいのか考えていたら、逆に明日美から問いかけられた。

話し合いって、確かに田代先輩から召集かかってはいるけど。



「……なんで明日美が知っとると?」



「なんでって……。昨日未来と電話で喋ったけん」



青柳さんと、話をしたのか。

もしかして青柳さん田代先輩からプロポーズをほのめかすようなことを聞いたんじゃないだろうか?



「明日美はなんか聞いとる?今日の集まりについて」



「ま、まさか!何人かで集まるってことしか、全然……」



内容については全く知らされてはいないのか。

そうだよな、もし何か情報を得ているとしたら、もう少し俺に対する不信感が和らいでいてもいいだろうと思うし。



「俺もな……四人で集まるってくらいしか知らんっさな。本当は俺、明日美にも来てほしかったっけど。まさか今日から佐世保とは」



俺が知ってるのもこれだけ。

しかも四人って、一体誰のことなんだか。

明日美は一緒には行けないし……。

田代先輩と青柳さんと俺と、瀬名か?

しかし瀬名も入院してるなら無理だろ。

田代先輩、瀬名に連絡していれば事故のことも知っているんだろうけど。



「私が佐世保に出張するって、おばちゃんから聞いたとやろ」



本当は佐世保じゃなくて福岡なんだろ?

なんて聞けないよな。

明日美の口から本当のことを言ってくれないだろうか。