『そいでよかとかマジで。やべっ!そろそろ見回りの来る時間ばい。とにかく手遅れにならんごとせろよな』



入院中なのに、俺に明日美の福岡行きを伝えるために電話かけてきたのか。

しかし、事故に遭っただと?

SMSの返事が来ない訳だ。

意識まで失っていたなんて重傷だったんだろうけど、俺はそんなことになっているとは知らず。



明日美は瀬名の分まで仕事をしなければならなくなったんじゃないだろうか。

いつもより忙しくなったせいで俺に連絡できずにいたのかもしれない。

ここ最近出張が多かったよな、佐世保とか。

…………しかし今回は佐世保じゃなく福岡だというし。

もっと詳しく聞きたかったけど、入院中じゃ無理だろう。



やっぱり明日は早めに帰るようにしよう。

そのためには江川先生に相談だ。

時刻は午後九時四十分。

急いで風呂に入ってこないといけない。

とりあえず携帯を置いて風呂場に向かった。



 






「……あれ、電源落ちてしもうとる」



風呂からあがって部屋に戻ってみると、携帯の電源が切れていた。

電話していたとはいえ、時間にして約三十分くらいなのに。

充電しないとな……。





翌日。



「それではまた明日から授業がありますから、今日はゆっくり休んでください。お疲れ様でした」



「お疲れ様でした」



教頭先生や江川先生たちに別れの挨拶をして、昼前には解散となった。

今日は日曜日ということでイベントが予定されていたらしく、スタッフの方々の邪魔をしてはいけないので早々に引き上げることになった。



今朝からは予想通り雨模様。

梅雨入りしたようだし、仕方がないな。



明日美が福岡へと出発する時間は不明だ。

昨夜携帯を充電するはすが、肝心の充電器が見つからず、電源は切れたまま沈黙を続けている。



とりあえず帰るしかない。

雨が降る中、車を走らせ家路を急いだ。






アパートの駐車場に着いたのは十二時過ぎ。

カーステレオのラジオで時報を聞いたから確かだ。

携帯の充電切れが気になるが、家に帰っている間に明日美とすれ違う可能性もないとは言えない。

それにどっちにしても充電には時間がかかるし、間に合わない。



もし明日美が家にいなかったら?

旅立った後だとしたら、ここで待っていても意味がない。



それでも、明日美に会えるチャンスを信じたい。