いつも、ずっと。

そしてやって来た俺の二十歳の誕生日。

二十歳だからといって特に変わったこともない。

案の定、明日美は出張と被ってしまい残念がっていたけど。

『友也、誕生日おめでとう。本当は直接会って言いたかったとにごめんね』

夜に電話をくれたし、明日美の声が聴けたからそれでいい。

週末の約束を確認して、電話を切った。

電話での短い会話だけでも満ち足りてるのは、前日の余韻がまだ残っているからだ。

日曜日でしかもバレンタインデー。

翌日の出張は朝早い出発だからあんまりゆっくりできないと嘆いていた明日美だったけど、俺は十分に満足できた。

先月の明日美の誕生日みたいに長時間一緒にいることはできなくても、濃密な時間を過ごせばいいのだから。

明日美が手作りのガトーショコラを持って、俺の部屋に来てくれた。

「ちょっとほろ苦くて俺好みばい。さすが明日美やな。美味い美味い」

「ああ良かった!味見出来んかったけん美味しくできとるかドキドキやったっさ」

「なに!?味見せんかったとか?そいはいかんなー。しょんなかけん俺が味見さしてやる」

そう言って最後のひと欠片を自分の口に放り込んだ俺。

『味見させるって言ったくせに……』

なんて言いたげな明日美の顔。

嘘なんかついてないぞ。

このガトーショコラの美味さを教えてやるから……口移しで。

明日美の腰をさっと引き寄せ、可愛らしい唇に優しく口づける。

驚いた様子だったけど、俺の意図を察知したのか、舌で軽くノックしてやると簡単にその唇を開いてきた。

まだ俺の口の中に残っているショコラを舌に乗せ、明日美の口内に送り込む。

よく味わえよ、明日美。

貴重な最後のひと欠片、俺も存分に味わってやる。

ほろほろと蕩けていくショコラのように明日美の心も身体も蕩けさせたい。

最後の最後まで味わい尽くすように舌を絡ませ合い、ショコラも明日美もしっかりと堪能させてもらった。

「どう?美味かっただろ、自分で作ったガトーショコラ」

解放してやってもしばらくは惚けた様子だった明日美だけど、少し落ち着いたころに感想を聞いてみると、意外な返事をしてきた。

「うん……。ショコラのほろ苦さは分かった。けどね、ショコラの味がどうのこうのよりも、友也がくれたキスが……甘かったぁ」

そんなに煽るんじゃねーよ。

止まらなくなるだろ。