いつも、ずっと。

観覧車から見る夜景もイルミネーションも綺麗で、明日美はまた感激していた。

俺は例によって夜景よりも明日美に釘付けだったけど。

興奮してはしゃいでた明日美が急にこっちを見るから、ずっと明日美ばかり見ていた俺とバッチリ目が合った。

またいつか二人でここに来たいなと思う。

「そん時は俺たち……」

いや待てよ、一体何を告げようとしてるんだ俺は。

俺の人生プランは明日美と共に生きると決めてあるが、それを明日美に伝えるのは今じゃないだろ。

中途半端に言いかけてしまったけど、それ以上は言葉にすることは出来なかった。

だんだん高度が上がってきて、街の灯りもかなり小さくなった。

そろそろてっぺんかなと前を行くゴンドラを見てみると、丁度真上に到達したんだろう。

俺たちみたいなカップルがキスしているのが見えてしまった。

「人に見らるっとに、ようやるよな……」

確かに、観覧車でキスっていうのは恋人同士で乗るなら定番かもしれない。

俺たちだって世間公認のカップルなんだし、キスしたって可笑しくはないだろう。

だけど、人にそれを見られるのはどうなんだ。

俺はまっぴら御免だな。

まったく、昨今の若者には羞恥心というものはないのか?

俺たちが目撃したということは、俺たちも見られて当然ってことだ。

冗談じゃない。

誰が赤の他人に見せるかよ。

見せてもいいのは結婚式だけだ。

明日美も見たんだろうな、カップルのキス。

微妙な空気になってしまったから、明日美の出張話に話題を転換した。

予定では来月の中旬らしい。

俺の誕生日の十五日になるかもしれないと浮かない表情を見せる。

誕生日はどうせ平日だし、週末に一緒に過ごせたらそれでいい。

そして、出来ることなら……。

「俺のために作ってくれんか?」

明日美の手料理を。

「友也が食べたいって言うのなら、頑張ってたくさん作るよ!だったら食材の買い出しに一緒に行こうよ。私が作れるレパートリーってまだそがん大した事なかとけど……よか?」

明日美は実家暮らしだし、仕事も忙しそうだからあんまり食事を作ったりはしてないだろう。

だから豪華な料理や手の込んだものを期待してるわけじゃない。

俺のために作ってくれるのなら、それだけで満足だ。

男って生き物は意外と単純だから、好きな女の手作り料理ってものに弱い。

永遠の憧れだからな。