「気持ちいい〜!!」

バイクデートにぴったりの、よく晴れた日だった。
私は旦那の運転するバイクの後ろに乗っていた。

『油断して、手を離すなよ!』
「わかってるよ〜」



帰り道でのことだった。

赤信号でバイクが止まったとき、
少し先の交差点の真ん中に、黄色いジャンパーを着た白髪のおじいさんが立っているのが見えた。


「え?!おじいさん危ないよ〜!!」

『どうしたの?』

「ほら、あそこ!交差点の真ん中におじいさんが立ってる!!」



なんであんなところに立っているのだろう?
渡ろうとして、渡れなかったとか?



かなりヨボヨボなおじいさんなので、心配だ。信号が青に変わり、バイクが動き出す。

「今日は交通量が多いのに。おじいさん、大丈夫かな…」



バイクが交差点に差し掛かる




「え…!!??」



おじいさんがいない!!!


もしかして、ひかれた?!




私は振り向きながら、
通り過ぎた交差点を見た。

ひかれたら騒ぎになるはずだから、違うはず。
でも、歩道に渡ってもいなさそうだ。


どこ行ったんだろう?




「おじいさん、大丈夫かなぁ…?」


『あのさ…』

私が心配していると、旦那が少し口ごもりながら話し掛けてきた。

「ん?おじいさん、いた?」





『いや、そうじゃなくてさ。交差点におじいさん










い な か っ た よ 』