「いつ来ますか」


天満の引き締まった表情を見た朔は、この問題については真剣に取り組まなければならないと腰を据えて天叢雲を脇に置いて縁側に座るよう促した。


「もう来る。何故乗り込んでくるのかは言わなくても分かるだろう」


「追い返さない…ということですね?」


「雛乃の問題についてははっきり白黒つけた方がいい。しかし…また粘着されているんだな。お前の気が休まることがないから俺はそれを心配している」


相変わらずの心配性。

天満は朔の心情を推し量り、隣に座って小さく頭を下げた。


「僕のことはいいんです。いや…僕も幸せになりたいけど、せっかく雛ちゃんとまた出会えたんだから、次こそは…次こそは、雛ちゃんが僕を好いてくれるなら、幸せにしてやりたいと思うんです」


「雛乃はもうお前に惚れ切っている。さっきも手に触れていたな?お前が手を出してくるのを待っているんじゃないのか?」


やや頬を赤らめた天満の純情な反応にぐりぐり頭を撫でて立ち上がった朔は、目尻を下げたもののすぐきっと唇を引き締めて断言した。


「うちとしては全力で取り掛かる。お前もそうしろ。吉祥とやらはここに招いて完膚なきまでに雛乃を諦めさせる」


朔と共に頷いた雪男に頷き返した天満は、その夜雛乃に経緯を話した。

ここにやって来ると聞いてまた青ざめた雛乃だったが――天満の傍に居ると心が落ち着いて、全てを委ねることに決めた。


「主さまに申し訳ないです。私みたいな主さまのお力になれない小さな存在に目をかけて頂いて…」


「小さいも大きいも関係ないよ。うちが保護すると決めたからには絶対に守り切るから」


「天様…どうしてそこまでして下さるんですか…?」


――雛乃の潤んだ目は、恋をしてくれている目に思えた。

今まで遠慮して雛乃の部屋は進んで入ったことはなかったが…もう遠慮はしないと決めた。


「…なんでだと思う?」


「そんな…そんな聞き方は…卑怯です…」


肩から零れ落ちた雛乃の黒髪を指で梳くって口元に引き寄せた。

目が合い、言葉もなく見つめ合い、手を伸ばして雛乃の腰に触れた。


「抱きしめても…いい?」


「……はい…」


ゆっくり抱き寄せた雛乃の身体は緊張で固くなっていたが、久々に得た温もりとその香りに――牙が疼いた。